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「和海さん、一緒に昼飯食いましょう!」
時間割が昼休みに突入して直ぐ、教室に山岸が現れた。
教室にいた全員の注目を浴びるほどの大声でそう言って、ズカズカとオレの座る席の前までやってくる。
「ね、昼飯」
オレはまだ前の授業の片付けも終わっていないというのに、山岸は購買で買ってきたらしいパン等の入った袋を目の前にちらつかせた。
行動が早いな。
ちゃんと授業受けていたのか怪しいくらいに早いな。
「別にいい、けど」
友達になる事は了承したが、あまりにも山岸が積極的なので少し躊躇う。
「じゃ、場所移動しましょう」
オレが否定しなかったのに気を良くしたらしく、山岸はオレの腕を引っ張って椅子から立たせようとする。
「待て待て、そう慌てるな」
場所を移動するのは構わないが、オレの弁当はまだ鞄の中にある。
昼飯を食うのなら、まずはそれを取り出さないと。
「そっか。会長は弁当持参なんですよね」
弁当の事など一言も言っていないのに、山岸はあっさりと納得して腕を放してくれた。
ただ単に察しがいいだけなのかもしれないけど、少し気になった。
「オレがいつも弁当持ってきているって、どうして知っているんだ?」
ゴソゴソと鞄の中を漁りながら訊く。
取り出すのに少し手間取ってしまったのに、その間にも山岸からの返事はなかった。
「どうして?」
顔を上げてもう一度訊くと、山岸は貼り付けたような笑顔を見せた。
「そりゃあ、いつも見ていますから」
嘘くさいセリフを言い放って、それ以上の追求を逃れるようにオレの腕を引いた。
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