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  「友達だよ。見て分かるだろ」 「分かりませんでした」  矢野がきっぱりとそう言い切るので、逆にオレが間違っているような気になってしまう。  思わず武威に視線を向けると、目が合ってしまった。 「和海と俺がねぇ・・・」  オレから目を逸らす事なく、武威が意味有りげに呟く。 「何を見てそう思うんだか」  投げやりな針が、少し耳に痛い。  どうしてそんなに刺々しい言い方をされなければいけないんだよ。 「でも、まんざらでもないでしょ」  田辺が訊くと、武威は「論外だ」と言うように鼻で笑った。 「つーか、男を抱いて気持ちイイのか? って話だろ」  何を言い出すんだ、蔵原武威。  今はそんな話をしているんじゃなくて・・・。 「気持ちイイって聞きますよ」  とんでもない武威の疑問に、矢野が更にとんでもないセリフで返してきやがった。  どこからの情報だ、それは。 「矢野」 「・・・悪い、滑った」  田辺が窘めるように言うと、矢野は「しまった」と口を噤んだ。  そんな後輩たちの謎のやり取りよりも、自分に向けられていた視線があまりにも意外だったことで頭がいっぱいだった。  こんな会話で得た収穫と言えば、ここは仲の良い友人が恋人と間違われてしまうような世界なんだなぁ、と改めて気づいたくらい。  そうか。  今まで校内で耳にした「あの人とこの人は付き合っているらしい」という噂は、こんな風にして出来上がっていたんだな。  男子校だからって、男と男でそういう事になる確率が、いくらなんでも高すぎるとは思っていたんだよな。  ほとんど鵜呑みにして悪い事したなぁ。  ああ、でも。  ふと見やった武威がこっちを見て微笑う。 「なーに見てんだよ。本気で惚れたか?」  武威が軽口を叩くので、オレは「ばーか」と笑っておいた。  後輩たちに恋人だと間違われていたと知っても、オレと武威が親しい友人である事には変わりない。  武威とは、ずーっとこのままでいられたらいい、と心からそう思っている。  勿論、友人として。  だけど。  矢野たちに言われて気づいたんだけど。  相手が武威だったら、恋人という関係もそれほど論外でもない、と思った自分がいた。  それはとんでもない新発見だったので、冗談としても口に出す事はできなかったけど。
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