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だから、今のこの状態も不安要素の一つ。
たかが一日姿を見ないくらいで情けない。
何度言っても成長しないオレに、とうとう愛想が尽きてしまったのかもしれない。
そんな事が頭を過って、今までに感じたことのない不安に襲われた。
きっかけで思いつくのは、「好きだ」と書かれたあのカード。
あれの取り扱いを間違えてしまったのだろうか。
だとしたら、どうすればよかったのか。
またこの悩みに戻ってきてしまう。
「やっぱり、蔵原先輩が好きなんだ」
考え込んでいたオレに、山岸が楽しそうな声を降らせる。
どうしてそういう結論になるのか分からないが、全くの見当違いという事でもない。
少なくとも、即否定ができないくらいには。
だけど、まだ頷ける程の自覚が十分じゃないんだ。
好きだけど、友情ではなく好きだと口にするにはまだ早い。
このままでいたい。
でも、先に進みたい。
どちらを優先させても、きっと気持ちは落ち着かない。
あのカードに差出人の名前が無かったのは、こんな気分で書いたからなのかもしれない。
匿名だったら、気持ちを伝えても、相手との関係は変わらないままでいられるから。
今なら少し、分かる気がする。
受け取ってしまった方からすれば、いい迷惑だけれど。
「あ。考えてる」
笑ってそう言う山岸に対しては、どこまでが本心なのか疑ってしまう。
告白した相手に、他に好きな奴がいたというのに、お前のその態度は妙だぞ。
やはり、オレを好きだと言うのには、何か裏がありそうだ。
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