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今まで武威にされた事がなかったので、すぐには気付くことができなかったけど、多分間違いない。
どうしてか分からないが、武威はオレと話をしたくないらしい。
そう察した瞬間、酷い喪失感に襲われて、それ以上何も言えなくなってしまった。
ぼう然と立ち尽くすオレに目も向けず、武威はこの場を去って行ってしまった。
一体、何が起こったのだろう。
オレが、武威を怒らせるようなことをしてしまったのだろうか。
考えて、真っ先に浮かんだのがあのカード。
一言「好きだ」とだけ書かれたカードが重く圧し掛かってくる。
あのカードの事で何か言いたいのなら、こんな態度を取る前に口で言ってくれればいいのに。
武威が何も言わないから、オレも武威には何も言わなかった。
だけど、今は言いたい事や聞きたいことがありすぎて、どうしてあの時に武威に訊かなかったのか後悔している。
訊きたいことがあるなら訊けばいいとか、言いたい事があるなら言えばいいとか、碌に話もできないこの状況では解決策としては全く役に立たない。
武威と話をするのにこんなに苦労しなければならないなんて、数日前のオレには想像だにしなかった展開だ。
拒絶なんてされた事がないから、これからどうしたら良いのか分からない。
もう元のような関係には戻れないのかもしれない、と漠然と考えて、堪らなく不安になって、武威の姿が見えなくなってもその場から動くことができなかった。
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