05

1/9

246人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ

05

 武威が生徒会にも顔を出さなくなってから、今日で三日目。  宣言通りだけど、こんなに徹底しなくてもいいのに、というくらい姿を見せない。  こんな事は初めてだ。  ここまで本格的に避けられると、こっちも意地になってしまう。  意地でも、「会いたい」なんて思ってやらない。 「で、何でそれを俺に言うんですか」  あの日以来、なんだかんだと一緒に昼飯を食べている山岸は、人の真剣な悩みをそんなやる気のない質問で返してきた。  紙パックの烏龍茶をズズッと飲み干して、こちらも見ずに小さく息を吐く。  「何で」って、他に相談する相手がいないからだよ。 「お前、知っているんだろ。オレが武威を好きだって気付いたの」  相手が山岸なら、半ばヤケになって、口に出して認めてしまえるようになってしまった。  好きなのかもしれない、とは思っていたけど、こんなに好きだったとは、自分でも予想外だ。  山岸だけは、オレのそんな予想外を知っているから。 「そんなの、全校生徒が知っていますよ」  ところが山岸は、うんざりしたようにそう言い切って、ようやくオレを見た。 「知らなかったのは、和海さんだけです」  本人の目の前だというのに、とんでもないデタラメを断言しやがった。  そんな馬鹿な。  オレの事なのに、知らなかったのがオレだけだなんて、そんな馬鹿な話があるか。  大体、どうして皆はオレの気持ちが分かるんだ?  そんなのおかしいじゃないか。 「オレが知らなかったら、誰も知る筈ないだろ」 「見てれば分かりますよ。ついでに、蔵原先輩もね」  潰した紙パックをコンビニのビニール袋に入れて、山岸が微笑む。 「武威の、何が分かるんだよ」 「これも、知らないのは多分和海さんだけですよ」 「だから、何が」  勿体つけた言い方をされて、つい苛立ってしまう。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

246人が本棚に入れています
本棚に追加