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「荻野先輩! 聞きましたか!?」  昼食を終えて教室に戻る途中で、のどかな昼休みをぶち壊す矢野の声に呼び止められた。  矢野の様子から察するに、何か問題が起こったようだ。  普段から少しの事で大袈裟なリアクションをする奴だけど、わざわざ向こうの方からオレを呼び止めたという事は今回は急用のようだ。  急ぎ足でこちらにやって来た矢野は、オレの隣にいた山岸に気づいた途端にあからさまに嫌そうな表情を見せた。 「和海さん、俺先に行ってますね」  矢野の態度を察したらしい山岸は、そう言い残して去っていった。  そんな山岸を、矢野はずっと睨みつけている。  こいつら、仲悪いのか?  同じ学年だし、二人とも中等部から一緒の筈だから、何か挨拶程度の会話くらいあってもよさそうなものなのに。 「名前で呼ばせているんですね」  矢野が恐ろしく不機嫌な口調でぽつりと呟いた。 「え?」 「『和海さん』って」  一瞬、何のことだか分からなかったが、すぐに山岸のことだと分かった。 「別に、呼ばせている訳じゃないって」  あいつが勝手にそう呼んでいるだけだ。  しかし、指摘されて気づいたけど、あいつ一体いつからオレの事をそう呼んでいるんだ?  最初は絶対に「荻野先輩」だった筈なのに。
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