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「蔵原先輩の話、聞きました?」
不機嫌を引き摺ったまま、矢野が会話を次の話題へ進めた。
というよりは、最初に戻ったのか。
怒りと困惑の混ざったような後輩の言葉に、一瞬身体に緊張が走る。
藪から棒に武威の話かよ。
「さっき会った時に、生徒会を辞めるとか言われたんですけど。荻野先輩は知っていたんですか?」
何だって?
「最近は生徒会に顔も出さないし。こんな半端な時期に辞めるって、どういう事なんですか」
「ちょっと待て」
まくし立てるような矢野の勢い以上に、突拍子もない内容に混乱して頭が付いていけてない。
矢野だけではなくて、オレ自信にも落ち着く時間が必要だった。
「武威が、何だって?」
できるだけゆっくりと、時間をかけて聞き返す。
オレの聞き違いでなければ、武威が生徒会を辞めるとか何とか・・・。
「もしかして、会長も知らなかったんですか? 蔵原先輩が辞めたがっているって」
動揺しまくりのオレの様子を見た矢野が、意外そうに訊ねてきた。
悪かったな、知らなくて。
おかげで、今物凄くビックリしているよ。
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