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「それで? 待ち伏せていたんだから、何か用があるんだろ?」
意外にも静かな昇降口に、武威の声が響く。
放課後とは言え、授業が終わってから大分時間が経っているので、オレたち以外に人影は全くない。
ただ、部活動中の音が遠くから聞こえるだけだ。
「生徒会辞めるって、本当か?」
「辞めたいって思っているのは本当だよ」
あっさりと認めやがった。
「オレ、何かした?」
「・・・何だよ、いきなり」
「避けられているような気がしたから」
オレに言えない、オレを避ける理由。
本当は聞くのは怖いけど、まぁいいか、で済ますなんてできないから。
「気のせいだろ」
素っ気無い一言が胸に突き刺さる。
そんなに冷たくあしらうことないだろ。
こっちは、それでも真剣に聞いているんだ。
「じゃあ、辞める理由を教えろよ」
命令口調だったのが気に障ったのか、武威の眉間に皺が寄った。
「和海には関係ない事だから」
「関係無くても、理由くらい教えてくれてもいいだろ」
食い下がるオレに、武威は鬱陶しそうに顔を逸らした。
その態度は、かなり頭にくるぞ。
「言いたくない」
「やっぱりオレの事避けているんじゃないか」
そうとしか思えない態度と言葉。
怒りも感じるけど、それ以上に寂しさを覚える。
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