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「へぇー」  泣きそうな自分を冷たい気持ちで蓋をして、苦しくて止まりそうになる呼吸を何とか保とうとした。  息苦しさで止まりそうになる思考を強引に巡らせる。 「努力しても友達だと思えない奴と、よく今まで一緒にいたよな」  嫌味全開で刺々しく言ってやる。  一番気の合う友達だと思っていたのに。  つい最近、好きだと自覚したばかりだというのに。  こんなに近くにいるのに、目も合わせてくれないなんて。  惨めすぎて視界が眩む。 「そうだよな」  自嘲混じりの肯定という形で、武威が止めを刺しにきた。  さっきの嫌味はただの強がりで、心は既に瀕死の状態だ。  そんな人間に、躊躇いもなく追い打ちを掛けやがった。  なんて酷い奴だ。  武威がこんなに酷い奴だなんて知らなかった。 「それでも、傍にいたかったんだ」  蓋をした筈の気持ちが溢れそうになって、視界が滲んでくる。  そこに、ポツリと武威の呟きが落ちてきた。  頭が真っ白のままだったら聞き逃していたかもしれない、だけど絶対に落としてはいけない大事な一言。 「今の、どういう意味?」  訊くと、武威は慌てて背を向けた。  もしかすると、今の言葉は思わず出てしまったものなのかもしれない。 「何でもない」 「何でもなくないって」  こちらを向かせようと腕を掴んだけど、全く力が足りていない。 「もう話は済んだだろ」  冷たくそう言って、武威が帰ろうとする。  何とか引き留めようと、咄嗟に口を開いた。 「オレもつい最近、お前の事は友達だと思えなくなったよ」  そう言った瞬間、思わず動きを止めてこちらを見た武威の表情があまりにも動揺していたので、何か悪い事を言ってしまったような気になる。  なんて顔しているんだよ。  長い付き合いになるというのに、こんな表情は初めて見た。  こちらまで苦しくなるような顔だ。
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