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「色々考えたんだけど」
帰ろうとする武威を留めるという目的は果たしたので、できるだけ落ち着いた声を出す。
「オレは、武威が好きなんだと思う」
その言葉は驚くほど滑らかに出てきたが、こんな恐ろしい事はなかなか言えるものじゃない。
今更ながら、オレに告白をしてきた奴らを尊敬してしまう。
気にした事もなかったけど、この勇気は半端なものではない。
「・・・思う?」
そう訊く武威の声は、意外にも冷静だった。
「思うって何だよ」
なんなら、少し笑っているようだ。
もっと驚くかと思っていたのに。
「俺を好きで、それで何?」
「え?」
これもまた予想外な質問だった。
人が振り絞った勇気を蹴飛ばすような物言いが、少し面白くない。
だけど、言われてみれば確かにそうだ。
好きだと告白をしたら、その次には何を言えばいいのだろう?
困ったな。
何も思いつかない。
強いて言うなら、今まで通りにしてほしいという事だけ。
「抱かせろって言ったら、素直に抱かせてくれんの?」
「・・・・・・は?」
世界が、オレとそれ以外に分かれたかと思った。
さすがに、オレでも意味は分かった。
だけど、そんな衝撃的な言葉が、武威の口から放たれるとは思いもしない。
「俺を好きで、友達だと思えないって、そう言うことだろ?」
そう言うことかもしれないけど、あまりにも極端すぎるんじゃないだろうか。
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