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大体、武威が生徒会を辞めたがっている理由を訊きに来たのに、どうしてこんな事になっているんだ。
こんな所で告白したオレが悪いと言えば悪いんだろうけど、それにしてもいきなり「抱かせろ」は無いよな。
人格疑うぞ、オイ。
でも、困ったことに、答えは出ているんだよな。
なにしろ、オレの中で「もし告白されたら唯一断らない男」な訳だし。
「武威だったら我慢できる」
何をされても大丈夫・・・だと思う。
・・・・・・多分。
武威は気が抜けたように小さく笑った。
もしかして、機嫌直った?
という楽観的な発想は一瞬で消えた。
「我慢するんじゃなくてさ」
おもむろに、武威の手が伸びてくる。
壁にぶつけた額の辺りを彷徨って、指が微かに頬に触れた。
息を飲む緊張感。
相手は武威なのに、どうしてこんなに息が詰まるのだろう。
唇、喉、鎖骨と順番に降りていって、指先は胸元で止まった。
「俺に抱かれたいって思うようになったら、またおいで」
トン、と指先で弾かれて、身体が後ろへと二歩ほどよろけた。
その言葉を噛み締めながら呆然としている間に、武威はこの場から立ち去ってしまった。
残されたオレが先ずする事と言えば、上がりきった心拍数を下げる努力だった。
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