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「山岸って、男を抱いた事ある?」  昼食中の山岸にふとそんな質問をしたら、飲んでいた烏龍茶を景気良く噴出した。 「なっ、何をきゅっ、に・・・!」  咽まくりで何を言っているのか分からない。  驚いているんだな、という事だけは分かる。  質問が悪かったかな。 「抱いてって言われたら、男でも抱ける?」  今度はちょっと違う言い方で訊いてみた。 「会長の口からそんな大胆なセリフが出てくるとは・・・」 「大胆?」  こいつは何か勘違いをしているんじゃないか。 「相手にもよりますよ、それは」  ようやく落ち着いたらしい山岸が、予想していたより真面目にそう答えた。  やけに実感が篭っているように聴こえたのは、気のせいだろうか。  顔が赤いように見えるのは、さっき咽た所為か、それともオレの質問の所為かは分からないが。 「どうして急に、そんな事を言い出すんですか」 「ちょっと悩み事」  昼飯も喉を通らないくらいに深刻な。 「もしかして、誰かに言われたとか?」  鋭いな、山岸。  突然こんな事を言い出したら、誰でもそう思うか。 「まぁ、そんな所だ」 「誰にですか? すっげぇ気になるなぁ」  興味本位な山岸の追及は、不思議と鬱陶しくはなかった。  むしろ、誰かに聞いて欲しかったから、助かったとすら思ってしまう程だ。
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