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   おかげで少し浮上できたというのに、当の山岸は突然暗い表情になっている。 「どうした?」  見る見るうちに首と肩が落ちて、姿勢を保っているのがやっとの状態だ。  悪い物でも食べたか? 「・・・なんか、自己嫌悪で潰れそうです」 「いきなり、どうした?」 「今の自分の発言と、過去の自分の行動に潰されそうで」  意味が分からないな。 「俺が何を偉そうに言っているんだ、っていう自己嫌悪に陥ってしまいました」  何かを吹っ切るように大きく息を吐いた山岸が、ようやく態勢を立て直した。  それから、小さく深呼吸をしてこちらを見た。 「俺、和海さんに謝らないといけない事があります」  今までとは全く違う真剣な面持ちで、山岸はそう切り出した。 「ずっと、嘘を吐いていました」  山岸が妙に改まった様子で言うから、こちらもつい姿勢を正してしまう。  「嘘」なんて言われると急に不安になる。  何を言われても大丈夫なように、ある程度の覚悟も用意した。  そもそも、お前は最初から嘘を吐いていたけどな。 「俺が会長に近付いたのは、ある奴にそうしてくれって頼まれたからなんです」  山岸の真面目な告白を耳にして、何を言っているのか理解するのに暫しの時間が必要だった。  さっきから、山岸の言っている事に付いていけない。  誰かに言われてオレに近づいたって、そんな裏で糸を引いている黒幕登場みたいな陰謀めいた出来事が身の回りに起こるなんて思いもよらない。  そもそも一体どんな陰謀だ、それは。  オレに山岸を近づけて、一体何をさせようとしているんだ。 「誰だよ、そいつは」 「それは・・・言えません」  本当に申し訳なさそうに言う。  脅されている、という感じではなさそうだ。 「でも、そいつは本気で和海さんと蔵原先輩が上手くいけばいいって思っていて、何の見返りもないのに俺にこんな事頼むくらい真剣なんです」  どういう陰謀なのかは分からないが、その「ある奴」とやらは、オレと武威をくっ付けようと画策しているという事か?  何の見返りもないのに?  何者だ、そいつは。  そんな事をして、誰が得をするんだ。
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