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「ところで、自己嫌悪って何のことだ?」 「え?」 「さっき落ち込んでいただろ。潰れそうって」  何となく聞いたのが悪かったのか、山岸は再びガックリと肩を落として潰れてしまった。 「それはですね・・・」  と言ったきり、山岸はなかなか続きを口にしない。  焦らすのもいいけど、それだけ期待値が上がるだけだぞ。 「入学した直後に、俺が不安になっていたって話しましたよね」  親の急な転勤で、寮に入ることが決まったって言っていたよな。  その時にオレを見て好きになったって言っていたけど、あれも嘘だったのかな。 「その時期って和海さんに言ったのより結構長くて、その時にですね、あまりの不安から、寮の同室の奴を強引に襲ってしまいまして」  頭を抱えながら、消え入りそうな音量で山岸が言う。  聞き違いでなければ、信じがたい懺悔だ。  潰されるのも納得だし、なんなら潰されてしまえばいいくらいだ。 「何言ってんの、お前」  救いようのない懺悔をばっさり斬るように、冷たい言葉が無意識に口から出ていた。  フォローする気もないから、山岸を見る目も冷ややかに違いない。 「分かってます。分かってますよ、俺が最低だって!」  大きな罪悪感に押し潰された山岸が、ヤケになったように叫ぶ。 「俺だって、時間が戻せるなら自分を殺したいくらいです!」 「そこまでは言ってないけど」 「言ってください。むしろ、罵ってください」 「そういうの、オレに求められても困るんだけど」  それにしても、今のが本当なら、さっきの「一番大切な人に言う」というこいつの意見は全く参考にならない。  武威と山岸の思考が同じな筈がないのだから、元々参考にしても仕方ない事なんだけど。 「軽蔑しましたよね」  しない筈がないのにわざわざ訊くとは、なかなかに自虐的な奴だな。 「俺の言う事なんか信用できないし、意見も参考にならないって思っていますよね」  心を読まれたのかと思った。  今まさにそれを考えていた所だったから。 「でも、最初に失敗した奴の意見って事で聞いて欲しいんですけど、俺も蔵原先輩みたいに待ちたかったです」  じっとオレを見る瞳が悔しそうに震えている。  後悔しているのか。  だからこその自己嫌悪だもんな。
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