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08 (田辺)
話は少し遡る。
校内の公認カップルであると周知されていた荻野と蔵原が、実はただの友人だったと発覚した直後の事。
その日、田辺は先輩の蔵原が何かを手放す所を見かけてしまった。
付き合いの長い蔵原の、見たことのないような表情は、ただ単に「捨てる」と形容するには心苦しい、とても大切なものをゴミ箱に置いていったのだと察することができた。
田辺は、その「何か」を確かめる事にした。
昇降口の隅に置かれているゴミ箱の中から、丸められた紙を取り出した。
そこに書かれていた一言を見て、紙を持つ手と気持ちが震えた。
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