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そよぐ程度の風にも乗るくらいの軽い想いを、バラバラにならないように握り詰める。
手の中のたった一枚の紙を見ると、自分のしている事の意味が分からなくなる。
何の為に?
小さく丸められた少し丈夫な紙を広げて、どんな想いが詰まっているのか知りたかっただけ。
単純な好奇心。
だけど、それだけじゃない。
このままじゃ嫌なんだ。
もどかしくて堪らない。
この想いを丸めて捨てたのは、よく知っている先輩だ。
その場面を見かけたのは偶然で、先輩が立ち去った後にゴミ箱の中からそれを拾うのはこちらの勝手。
ただの紙となってしまったそれを見た瞬間、何故か分かってしまったから。
先輩は、想いを捨てたのだ。
ずっと抱いていた純粋な想いを。
それが分かっていながら、見過ごすことはできない。
余計な事だと言われようが、拾わずにはいられなかった。
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