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「見せる必要をなくしたのは蔵原先輩でしょ」
人気者に寄ってくる馬の骨を、蔵原先輩は片っ端から蹴落としているのだ。
本人には内緒で。
と言うか、知らないのは本人だけ。
否。
もしかしたら、荻野先輩も薄々は気づいているのかもしれない。
それは本人に訊いてみないと分からないが。
あの人に限って言えば、気づいていない可能性の方がかなり高いな。
「どうせ、また脅して諦めさせたんじゃないですか?」
「俺は考え直せと言っただけ。諦めるのは奴の意思だよ」
荻野先輩に近づくには、まず蔵原先輩という壁と乗り越えなければいけない。
ただの友人として近寄りたいのならそれほど難しくはないが、下心なんてあろうものなら、 その壁は高く険しく冷たく襲い掛かってくる。
つまり、とても大雑把に言うなら、「和海と付き合いたかったら、俺の許可を得ろ」という事だ。
許可なんて出る訳がないが。
「大体、荻野先輩宛の手紙が、どうして先に蔵原先輩の手に渡っているんですか」
「今時、下駄箱はないよな」
「・・・確かにそうですけど、だからって取ってきちゃダメでしょ」
「そのままにしておいて、和海が男なんかと付き合ったらどうするんだ。男だぞ、男。お前、責任取れるのか?」
さすがに責任は取れない。
が。
荻野先輩だって、嫌なら断るだろ。
それを、わざわざ先回りして圧し折るとは。
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