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「男と付き合うのが、そんなに反対?」
「当たり前だ」
「自分だって男じゃないですか」
そんなに「男」という部分が気に入らないのなら、自分はどうするんだろう。
蔵原先輩が和海先輩を好きなのも、荻野先輩が蔵原先輩といる時が一番楽しそうなのも周知の事実だ。
なのに、何故そんな事ばかり言うのか。
そもそも、二人が付き合っていると思っている生徒は沢山いるし、付き合っていないにしてもそれは時間の問題だと思っている。
「はぁ??? 何言ってんだ、お前は」
相変らず、蔵原先輩は「訳が分からない」と顔を顰める。
訳が分からないのは、先輩の言動の方だ。
「自分が付き合う気ないなら、どうしていつも荻野先輩への告白を握りつぶしているんですか」
他の奴に先を越されたくないから、という理由なら納得できないこともない。
だったら、さっさと告白しろよ、とも思うけど。
しかし、蔵原先輩は「そうではない」と言い張る。
自分は「男なんかと付き合うのは論外だ」と。
例え、その相手が荻野先輩だとしても、だ。
そこだけは筋が通っているようにも思える。
いくら特別でも、友人は友人なのだから。
好きだから付き合うというのは単純すぎる。
普通はそれで通るのだが、蔵原先輩の場合はそれだけでは納得できない。
荻野先輩宛ての手紙を勝手に捨てたり、差出人を威圧したり、ただの友達と言い張るには荻野先輩に執着しすぎている。
自分では気づいていないのだろうか?
「和海の隣には、俺がいれば十分だろ」
これ以上の何を望むのか、という自信に満ちた表情には迷いがない。
それなのに、どうして認めないのだろう。
鈍いのか?
それとも、気づかない振りをしていたりして。
矛盾は葛藤の裏返しですか、先輩?
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