08 (田辺)

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  「男と付き合うのが、そんなに反対?」 「当たり前だ」 「自分だって男じゃないですか」  そんなに「男」という部分が気に入らないのなら、自分はどうするんだろう。  蔵原先輩が和海先輩を好きなのも、荻野先輩が蔵原先輩といる時が一番楽しそうなのも周知の事実だ。  なのに、何故そんな事ばかり言うのか。  そもそも、二人が付き合っていると思っている生徒は沢山いるし、付き合っていないにしてもそれは時間の問題だと思っている。 「はぁ??? 何言ってんだ、お前は」  相変らず、蔵原先輩は「訳が分からない」と顔を顰める。  訳が分からないのは、先輩の言動の方だ。 「自分が付き合う気ないなら、どうしていつも荻野先輩への告白を握りつぶしているんですか」  他の奴に先を越されたくないから、という理由なら納得できないこともない。  だったら、さっさと告白しろよ、とも思うけど。  しかし、蔵原先輩は「そうではない」と言い張る。  自分は「男なんかと付き合うのは論外だ」と。  例え、その相手が荻野先輩だとしても、だ。  そこだけは筋が通っているようにも思える。  いくら特別でも、友人は友人なのだから。  好きだから付き合うというのは単純すぎる。  普通はそれで通るのだが、蔵原先輩の場合はそれだけでは納得できない。  荻野先輩宛ての手紙を勝手に捨てたり、差出人を威圧したり、ただの友達と言い張るには荻野先輩に執着しすぎている。  自分では気づいていないのだろうか? 「和海の隣には、俺がいれば十分だろ」  これ以上の何を望むのか、という自信に満ちた表情には迷いがない。  それなのに、どうして認めないのだろう。  鈍いのか?  それとも、気づかない振りをしていたりして。  矛盾は葛藤の裏返しですか、先輩?
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