01

7/9

246人が本棚に入れています
本棚に追加
/96ページ
  「じゃあ、全部断っちゃったんですか?」  そう言う矢野は少し残念そうだ。  一体何を期待していたのだろうか。 「当たり前だろ。何で好きでもない男と付き合わなきゃならないんだよ」 「そうですけど」  矢野にまた何か言われる前に、生徒会室の奥のいつもの席へと向かうことにした。  今までずっと部屋の入り口で話し込んでいたので、少し疲れた。 「和海、そこ気をつけろよ」  歩き出したオレへ、部屋の奥から武威が注意を促した。 「え?」 「ダンボールが・・・・・・あ」 「うわっ!」  武威が「気をつけろ」なんて言うから、そっちに気を取られた途端に何かに蹴躓いてしまった。  いつもは何もない所に、今日に限って何故かダンボールが。  中に何が入っているのか知らないけど、オレが蹴ったくらいじゃビクともしないくらい重い。  と言うことは、弾かれたのはオレの方で、見事に前のめりにバランスを崩してしまった。  咄嗟に手を付いたので床と衝突と言う事態からは免れたが、当たった足が痛い。 「大丈夫ですか?」 「なんとか・・・」  涼しい声だったのが気になるが、心配してくれた田辺へと若干乾き気味の笑顔を見せた。 「和海が無事でも、鞄が重体だぞ」  ガタッと椅子から立ち上がった武威が、やれやれと言うようにこちらへやってきた。  言われて見れば、手に持っていた筈の通学鞄が無い。  どこだろう、と探すまでもなく、目の前に落ちていた。  しかも、無残にも中身が雪崩れ出ている。 「お前、また鞄を開けっぱなしだったろ」  説教というほどキツイ言い方ではないけれど、少し強い語調でそう言いながら、武威は雪崩れたオレの私物を拾ってくれる。  この惨状を見れば、確認するまでもないだろう。  「また」と言われるのは少々心外だけど、事実だから仕方ない。  別に取られて困るようなものは入ってないのだから、という言い訳は武威には通用しない。  現に、今こうして迷惑をかけているのだから、言い返す言葉もない。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

246人が本棚に入れています
本棚に追加