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  ○ ○ ○    もうじき昼休みが終わろうかという面倒な時間に、騒がしい教室に滑り込んだ。  ただし、ここはオレの教室ではない。  隣の、武威の教室だ。  後ろの方の席に辛気臭く座っている武威を発見して、その前に立った。  オレに気づいてこちらを見た武威は、少し驚いたように目を大きくした。  ここにオレがいることが、そんなに意外か。 「何か用か?」  すぐに目を逸らして、素っ気無く訊いてくる。 「授業始まるぞ」  早く帰れと言わんばかりの口調と態度。  もう慣れたっていうのも変な話だけど、最初の時ほどのショックはない。 「思えるようになった」  教室の喧騒に掻き消されないように、はっきりとした口調と音量でそう告げた。  目の前にあるのは、怪訝そうな武威の顔。 「は?」  逸らした顔がやっとこちらを向いた。 「武威に、抱かれてもいいと思えるようになった」  それまでザワザワとしていた教室内が、一瞬にして静まり返った。  武威も固まったまま動かない。  人がせっかく覚悟を決めて来たというのに、凍りつくのは失礼だろ。  元はといえば、武威が言い出した事なのに。  それとも、聞こえなかったのか?  そんな筈はないと思うけど、もう一回言ってみるか。 「だから、武威に抱・・・っ」  言葉を遮るようにしてガタッと勢いよく立ち上がった武威が、強引に手を伸ばしてオレの口を塞いだ。  それから、マネキンを抱えるようにして教室の外にオレを引き摺っていった。  抵抗のしようもないくらいの力だったけど、する気もなかったから、されるが儘に引き摺られた。
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