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「なんでまた泣くんだよ!?」
「だって、大好きって・・・言った、から」
「は?」
「大好きって言ったぁ」
ただの「好き」ではない。
その上をいく「大好き」だ。
しかも、武威に言われると破壊力が違うという事も分かってしまった。
「悪かったな。余計な事言って」
バツが悪そうに言うので、慌てて首を横に振る。
さっきまでの涙と、今の涙は違うものなのだ。
何が、と聞かれても上手く答えられないが、それぞれ違う感情が働いている。
「ずっと、その言葉が聞きたかった」
自分で言わせたとはいえ、言われるととても嬉しい。
「好き」と言われて嬉しいなんて、きっと武威だからだな。
こんなに気持ちが舞い上がるなんて思いもしなかった。
「嘘でも嬉しいよ」
「は? 嘘って何だよ」
謙虚な気持ちで言った言葉を聞いて、武威がキレ気味に言う。
「嘘って言うか、言わせてゴメンて言うか」
オレを泣き止ませる為に仕方なく言ってくれただけだと、ちゃんと分かっている。
「本当に、お前はどうしてそうなんだよ」
ガックリと肩を落とした武威が、力無くそう言う。
「和海の事が大好きなのは本心だ」
またしても「大好き」と言われて、心が浮足立つ。
どうしよう、抱きつきたい。
「どうした?」
溢れだしそうな感情と欲望を押さえる為に葛藤する様が、武威の目には不審に見えたらしく怪訝な表情で覗きこまれた。
「変な顔になってるぞ」
「元々だ」
「イヤ、いつもはもっと可愛い顔してるだろ」
強がりで誤魔化そうとしたのに、何故か無双化している武威のオレを弱らせるセリフに撃沈した。
「大好き」の次は「可愛い」とまで抜かしやがった。
そんな事を気安く言う奴ではなかった筈なのに。
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