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○ ○ ○  それは、今の授業が始まる直前の休み時間に遡る。  10分程の休み時間、気分転換にと教室から直接出入りできるベランダへ出た。  3階のベランダからはグラウンドが一望できる。  手すりに噛り付いて、体育の授業を終えた生徒達が片づけをしている中から、お目当ての人物を探す。  言わずと知れた、蔵原武威だ。  武威のクラスの前の授業が体育で、今日はグラウンドでサッカーだと知っていたからこその、ベランダでの気分転換なのだ。  グラウンドに散らばる生徒たちを目で追って、何人目かで武威を見つけることができた。  見付けた時の喜びように、我ながら恥ずかしくなる。  少しでもその姿を見たい、という恋に浮かれた状態の自分を知られたくなくて、ついつい緩んでしまう口元を隠す。  こんな気持ちになる事なんて、今まで無かったというのに。  不思議だよな。  一度好きだと思ってしまったら、あとはもう積み重なるだけだなんて。  大方の片づけを終えて、武威たちが教室に戻っていく。  よほど汗をかいたのだろう。歩きながら、おもむろに体操着を脱いだ。  談笑するクラスメイトも脱いだので、次の授業までに着替えをしなければならない為の時間短縮とも考えられる。  まぁ、よくある光景だ。  全くもって珍しくはない。  が。  今のオレには、やや刺激的な光景だった。  特別に鍛えている訳ではないが、無駄な脂肪のない、引き締まったと表現しても差し支えのない身体。  普段は制服で見えない部分を惜しげもなく晒している上に、汗ばんでいる感じも相まって、何故か動悸が止まらない。  
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