箱の中

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 僕は学校という名前の箱の中にいた。だけどここでは自由が制限されている。それに強制的に人と関わらせてくる。こんな窮屈な生活はしたくない。髪を染めてみたい、ピアスを開けてみたい、勉強をしたくない、義務で入っている部活をやめたい。僕は早くこの箱の中から出たい一心で学校生活を送った。もちろん僕には友達と呼べる人はいないが、この箱から出たいという戦友はいるはずだ。僕がただ一方的に思っているだけかもしれないけど。  やっとこの時がやってきた。卒業式、やっとここまで来た。一応就職場所は決まっている。僕はやっとこの箱の中から出られる。まるで監獄のようなこの箱の中から。周りには泣いている人もいる。ただ、僕が流す達成感やうれしさに満ち溢れる涙ではなく、友達や学校生活との別れからくる悲しみの涙がほとんどだ。だけど僕と同じような独りの状況なのに違う意味を含んだ涙を流している人がいる。なんで?あの箱の中から出られるんだよ?独りで悲しみに暮れ泣いている人にどうして泣いているのかを聞いてみた。 「自由になってしまうから…」 そんなバカな話があるか!! 1年後  とあるビルの屋上で僕は空を見上げている。どんよりとした雲が立ちこめていて、こんな僕が死ぬにはふさわしい空だ。 もうだめだ。耐えられない。自由とはこんなにも暴力的なのか?箱の中にいたときのあの窮屈感が懐かしい。今まで濁った水槽のような箱の中で飼われていた僕は大海原に出たらたちまち飲み込まれてしまった。箱に縛られていたのではなく、守られていたのだ。あの人が言っていたことは正しかった。僕は自由に殺されたのだ。
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