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部屋のあるじは完全に信用してない顔で見守っていた。
そうして開けられたケース。
そこには何やら四角い形をした泥の塊のようなモノが、大事に保管されている。
部屋のあるじはそれを見て、
「はなくそ?」
「違うッ。本だ。これは一冊の本なんだ」
部屋のあるじはまさかといった顔だ。
だが、オズボーンは自信満々に微笑んでいる。
「ここを見てくれ」
と、オズボーンは塊の表面を指す。
「はなくそ?」
「だから違うッ。文字だよ。もうすでに朽ち果てて、変質も甚だしい。原形を保っているのがやっとの状態だが、ここに文字の跡がある。かつての日本語だ」
「えぇ。おまえが寝ぼけて、はなくそで書いたんじゃないの?」
……だったら、ペンで書くよぅ……。
オズボーンは思った。
「まあ、でも、おまえがここに来た理由はよくわかった」
ひとしきり泥の塊を検証したのち、部屋のあるじは不敵に笑う。
彼の名はファーレンハルト。
100年ほど前に発見されたオメガ線という不可視光線。そのオメガ線を物質解析に応用することに成功した物理学者だ。
「確かに僕の研究所にある最新の解析装置を使えば、これが本かどうかはすぐに判明する。その内容と共にね」
「ああ。本に決まってる。どうだ。こいつはすごいことになるぞ」
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