『神』についての仮説

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『神』についての仮説

世紀の大発見から数年が過ぎた。 オズボーンはその功績が認められ、教授となり、さらなる研究に取り組んでいた。 あの本を発見するまでは学者の端くれにすぎなかったが、ずいぶんと立場が変わったものだ。 オズボーンはしみじみと笑う。 「教授。コーヒーが入りました」 ふと、傍らには助手の姿が。 メガネの似合う、シュッとした雰囲気の女性である。 名をマーガレットといった。 「ありがとう」 と、オズボーンはコーヒーを受け取り、そして、 「しかし、マーガレット君。君が俺の助手となりもう一年だ。そろそろ、その他人行儀をやめないか」 そう言って、にっこり笑う。 「それは、どういうことでしょう? 教授?」 「教授だなんて、畏まるな。俺のことはお兄ちゃん、と呼んでくれて構わんのだぞ」 オズボーンはニヒルに微笑んだ。 マーガレットがドン引いたのは言うまでもない。 そんな感じで、オズボーンは『妹が俺を好きすぎてハンパないんだが、けど、俺が本気で好きなのは兄さんだけだから』(以下、『俺好き』と略します)の研究をすすめていたのであった。 もとより原型をとどめていない本である。 破損も多い。     
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