第一章

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第一章

深夜零時。 コツコツと長い廊下を靴の音が響き、近付いてくる。 重い木製のドアかキィィと怪しく音を立て、静かに開く。 広い部屋の右側、壁に寄り添うように置かれたベッドに近づくと、陶器のようなその肌を愛おしそうに撫で、フッと息を吐いた。 「もう…寝てしまわれましたか?」 毎度同じことを呟きベッドの中にするりと入り込む。 「まだ…起きてる」 その言葉を拾い、城之内清彦はその細い身体を引き寄せて胸元に仕舞いこんだ。 「いけない子ですね。早く寝ないと」 そう言いながらパジャマの裾からひんやりした手を肌に這わす。 「今日は熱帯夜です。空調は大丈夫ですか?」 言葉とは裏腹な甘い指先が触れ、漏れそうになるその声を細い指が覆う姿を微笑みながら見ている。 「ダメですよ、征樹様、可愛いお声を隠しては」 引き離された指先の代わりに、清彦の柔らかい唇が塞ぐ。 この屋敷に務めて十五年。今年十八歳になる成宮征樹のお世話役としてお側にいる。生まれた頃から身体の弱い征樹を、三歳の頃からこの清彦が支え続けてきた。 当主は本宅を構え、この征樹を疎んでいる。征樹の為に建てた敷地の外にある別宅を覗いたことは一度もない。 母親は柾樹の命と引き換えにこの世を去り、何人もの妾を囲い征樹の存在を消すかのように敷地の外に屋敷を建て、この隔離されたような離屋は時が止まったように当主よって仕組まれていた。 質素な暮らし。テレビもパソコンもない、今の時代に考えられないような暮らしを柾樹はなんの嫌味事も言わず暮らしている。 「今日も…触ってくれるの?」 期待に満ちた柾樹の囁きに胸が鳴る。それをひた隠しパジャマのズボンに手をかけた。 「そうですね、体調が良ければ致しましょう」 細い腕が首元に回り、心待ちにしている様子が伺えると清彦は笑みを漏らし勃ち上がりかけた芯を優しく握りしめた。 世間の18歳と比べれば身体も小さい。未熟児で産まれた柾樹は小さく育ち、あらゆる医師に導きを頂き今は元気に育っている。 それも清彦がここに来てからのこと。それまではどうしていたのかさえ知る由もない。 清彦が出会った頃は、か細く人形のような表情のない子供だった。
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