第一章

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そう言われれば、最近の呼び出しで話す内容と言えば、金に関することが多かったように思える。柾樹を疎ましがっているのではなく、金に困っているとなれば、柾樹に稼げと忌々しく言ったことと辻褄が合う。 「ここはさ、時間が止まったような暮らしだよな。テレビもパソコンもない。もう世の中はないものがないくらい豊かだってーのに、慎ましく生きるのもいいけど、時代についていくことも必要なんじゃねーの。坊ちゃんもお前もさ」 ガラスにコツコツと石が当たるような音がした。大吾はカーテンを開け、外に向かって軽く頷いた。すると窓から男が二人入ってくる。そして暴漢を寝袋に押し込むと窓から外に向けて放り投げた。 「じゃあな。また連絡くれよな。あ、これ一個貸しだから!」 颯爽といなくなり静まり返った部屋で、ここでは眠ることもできないと判断した清彦は、震えの止まらない柾樹を抱えたまま自室に戻ることにした。
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