第一章

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偽りであっても柾樹は家族だと思っている。兄のように親のように、一番の理解者だと、そして全てにおいて柾樹の一番でありたいと思って育ててきた。 「…あの人…僕が悪いって…何度も言った…僕がなんかしたんだ…ねえ、清彦…あの人どうなるの…僕が、悪いことしたなら…謝らなきゃ…」 襲われて怪我をしたというのに、相手の事を想う綺麗な心に魅せられて堪らない気持ちになる。 邪な想いをぶつける大人に、そんな綺麗な心はいつか踏みにじられてしまうんではないかと、それはやはり自分が守らなくてはと清彦は胸に置く。 「大丈夫、あいつは元警官なんだ。悪いようにはしない。それより手当をしよう。口の中切ってるみたいだな…」 ナイトテーブルの下にある救急箱を持ち上げた。 「清彦って、強いんだね…僕びっくりして見惚れちゃった」 顔を上げた柾樹は口元を痙攣らせながら笑顔を見せてくれる。その笑顔が痛々しく口元を壊さないように触れた。 「武道をやってたからね。それより、身体…痛いところはないか?」 「大丈夫…あの人…僕を殺そうとしたんじゃないよね…犯そうとしたんだよね…」 「…何でそう思う?」     
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