第一章

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数時間ぶりに会う親友は昨晩とは違う出で立ちのスーツ姿で立っていた。先程の使用人の女が「結城」と言ったのは…大吾のことだったんだろうかと首を捻る。 「お前、まさか、昨日の…」 貸しという言葉が過ぎり柾樹を庇うように立つ。そして少し威嚇をする視線を投げつけた。 「おいおい、待てよ。親友にそれはないんじゃないの?昨日の貸しは坊ちゃんにじゃなくてお前にだし。今日は坊ちゃんに用があってきたんだから」 欧米人のように首を竦め手のひらを上にあげる素振りを見せる。清彦の横を通り過ぎ、柾樹の隣に腰を下ろした。 「言われた通りにやったよ。おやっさん、もう帰ってこないだろうね。それとこれな、爺さんの言われた通り行ってきたぜ」 大吾の言葉に返事もせず、咀嚼を繰り返し牛乳を飲み干して手を合わせた。なんのことだかわからなく立ち尽くした清彦に微笑んで、柾樹は大吾に向き合った。
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