第一章

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「ありがとう。お爺様は元気?また会いたいと伝えて」 「ああ、施設で快適そうだよ。爺さん、全部カタがついたって言ってたぜ。俺の取り分は爺さんから貰ったから。それと…坊ちゃんお願いがあるんだ。そこの木偶の坊を幸せにしてやってくれないか」 大吾は立ち上がり、木偶の坊と称された清彦の横に並び立った。 「俺は爺さんと坊ちゃんに言われた通りにしただけだ。それと昨日の奴はやっぱりご当主の差し金だった。おまえ、肩外してたんだな…やっぱすげーな。勝てる気がしねぇ」 肩に置かれた手から人差し指が伸び頬に食い込む。昔ふざけてよくやっていたことを思い出す。 「俺はさ、ずっとお前の親友なんだよ。だからもっと頼っていんだよ。昨日の貸しは坊ちゃんにお願いしたからチャラにしてやる。それとお前の実家、爺さんに頼まれてリフォーム済んでるぜ。また住めるようにってな」 話の見えない清彦は「じゃあな」の声に「ああ」とだけ反応した。 「清彦、ぐるぐるしちゃってる?ごめんなさい。僕は僕の仕事を全うしただけなんだ…僕は成宮の跡取りだからね」 立ち上がった柾樹は清彦のそばに行き、両手を広げた。初めてあった日、清彦が柾樹にしたように。     
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