第一章

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「もういんだよ。おいで、清彦」 そう言い、小さな身体で目一杯清彦を受け止めようとしてくれている。 「柾樹…」 引き寄せられるようにその腕に辿り着き、あの頃のように柾樹は抱きしめてくれた。 「清彦は僕のこと、好きだよね…沢山愛してくれて大切に育ててくれた。これからは僕が清彦の家族になるよ。あ、違う…清彦の家族兼、恋人になるんだよ。僕に自慰を教えてくれてる時、清彦も…ちゃんと知ってる。もう隠さなくていんだよ。僕は清彦のものなんだから」 背伸びをしながら必死に抱きしめてくれるその姿はあの時のまま。小さな腕の中は温かかった。清彦の心を温める充分な愛を柾樹は与えてくれている。 大吾の『カタがついた』とは何を意味するのか知りたいが、自分を欲しがる柾樹の姿に、素直に嬉しいと良い方向に向いていると期待を持ち、清彦の胸は走り始めた。 手を引かれ、昨晩の悪夢があったベッドに押し倒される。華奢な身体のどこにこんな力を隠していたのかと驚き、そして覆い被さる柾樹はあの頃の可愛らしい面影を見せながら語りかけた。 「ここで寝る度、昨日のことを思い出すから…ここで上書きしよう。清彦と愛し合いたい」 どこでそんな言葉を覚えたのか。     
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