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それから十五年。年の離れた弟のように、時には祖父のように厳しく柾樹の成長をこの上なく見続けてきた。
時折、本宅に呼ばれ、柾樹の状況を聞く当主にうんざりしながら報告をする。それ以上のことは何も言わなかった当主が、柾樹が十五の誕生日を迎えた頃から怪しい物言いに変わっていった。
柾樹の主治医が報告している。それは医者として真っ当な行動だ。問題はその中身だ。
すくすくとここまで大病もせず育ったのは、柾樹の努力と清彦の支えがあったからこそ。清彦は自分の仕事を真っ当しただけのこと。表面的にはだが。
真っ直ぐに無垢なまま育っている柾樹が大声を上げて笑えるようになったのも、清彦の愛情の賜物なのだから。
毎日の習慣の意味を教えたのも、暑い日に庭で蝉を取ることを教えたのも、全て人間らしく生きて行くためにと清彦が愛情を込めて育てたからだ。
病弱な:幼子(おさなご)を放り出しておいて、元気に育ったからと柾樹に嫌味や罵倒する当主の物言いが気に入らなかった。
『あの役立たずはどうしている?生きているだけの金食い虫が。なんならその身体を売って働いてもらいたいくらいだ』
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