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君と。
愛していると言ってしまえば、ただそれだけで。
言葉にしたからといってぜんぶ伝わるわけでもなくて。
けれど、君のことを最後に愛した人になる。
恋だと自覚したときには君はすでに病に蝕まれていた。まるでつまらない映画のようだと僕は泣いて、君は何故だか晴れ晴れとした顔をしていた。
それからの日々は、ふたりきりで。釣りに行ったり、山を登ったり、一日ゲームをしてみたり。はじめてのこと、好きなこと、なんでもやった。これが最後だと忘れないように。
君の、少し骨ばった白い手が好きだった。
その柔らかな皮膚も、その下を流れる熱い血も、すべて燃えてしまった。残ったのは、真っ白な骨。
「ひとつだけお願いがある」と言った君。ひとつかみ、灰になった自分を空に蒔いて欲しいと、そう言って君は笑った。
「ベタな映画の結末なら、空から見守るしかないでしょう」
空を見上げれば、君がいる。
青い空にぷかりとひとつ、雲が浮かんでいた。
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