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「相楽さん……僕達は貴方と出逢えて幸せでした」
「金田君……」
「悔いはありません、僕達の死の先には平和に暮らす彼女の未来があります」
椿から聞いた未来。
戦もなく、全ての民が平等で、豊かで平和な時代。
まるで夢のような時代がもうすぐやって来る。
自分達の死は、その時代の礎となるのだから決して無駄じゃない。
そう気付かせてくれたのは椿だった。
「相楽さんの死を見届ける事が出来なくてすみません」
「……」
「待っていますから……迷っては駄目ですよ」
先に逝った同志と共に、後から来る相楽が迷わないように……
悪神になどならぬように……
我々が相楽さんを導こう。
同志七名の死を見届けた相楽は、ただひたすら耐えていた。
皆、有望な若者達ばかりだ……
無念でしかない……
だけど、それを今頃悔やんでも、彼らが生き返る事はない。
もうすぐだ……
もうすぐ、この悪夢から解放される。
霙混じりの雨は、いつの間にか止んでいた。
すっかり日も暮れて、辺りは闇に包まれている、篝火がパチパチと音を発て、血の気の引いた相楽の顔を赤く照らしている。
「赤報隊一番隊 隊長相楽総三」
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