冤罪

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相楽の言葉に介錯人はビクッと肩を震わせ息を飲んだ、介錯人の刀は既に何人もの首を切り落とし、懐紙で拭っても、血と油で汚れてしまっている。 よほど、腕に自信のある者でなければ、一度で首を切り落とすのは難しい。 「どうした?この相楽の首を落とすのが怖いか?」 「……っ!?」 図星を突かれ、更に怖じ気づいた介錯人が頭を垂れている相楽に向かい、勢い任せに刀を振り落とした。 「……くっ!?」 引きが甘かったせいで刀は相楽の首の骨で止まり、切り落とす事が出来なかった。 相楽は苦痛のうめき声をあげ、そのままの格好で介錯人に向かい怒鳴った。 「代われ!!未熟者!!」 それを聞いた大橋は、駆け寄り介錯人の肩に手を掛け下がらせた。 「俺がやる!!退け!!」 大橋は刀を抜き、苦痛に耐えている相楽の首を見事に跳ねた。 相楽の髻は血にまみれ、地面へと落ちた。 どこから途もなく聞こえてくる南無阿弥陀仏の声、止んでいた雨も再びポツリポツリと振りだしていた。 こうして、赤報隊一番隊、隊長相楽総三と幹部七名の処刑が終わった。 罪状も読み上げられる事もなく無惨に殺された彼らに同情する声が上がった。 だが、彼らの首は次の日、罪状と共にこの地に晒された。
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