慟哭

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相楽総三とその同志の処刑から二日後、佐之介と克弘によって京都にいる金輪の元に、相楽が処刑されたと伝えられた。 「それは……誠なのか?」 「うん……」 下諏訪の本陣に行った者は尽く捕縛され、幹部は処刑、残りは追放となった。 「何故、そんな事になった?」 「そんなのわかんねぇよ……大木さん達が帰って来たと思ったら、総督府に呼び出されたんだ……」 大木、西村ら十八名が岩村田藩に幽閉された事は金輪の耳にも入っていた。 信州諸藩のに出回った、赤報隊は偽官軍であるから捕縛せよとの命令の真意を問う為に、金輪は相楽と離れ京都まで戻って来ていたのだ。 その最中、急に大木達が帰隊、相楽が出頭しその後、数十人が更に下諏訪本陣に向けて出発したが、誰一人戻って来る事はなかったと言う。 樋橋に残された数人の隊士は相楽ら処刑の次の日、総督府によって赤報隊が残していった武器等の物資の引き上げと共に捕縛された。 佐之介と克弘は隊士達によって逃がされ、新政府軍に見つからないように、山の中を抜け京都の金輪の元に来ていた。 「何故だ……」 薩摩から赤報隊は官軍であるとお墨付きを貰い、これから江戸に向かい進軍出来ると思っていた矢先の出来事に金輪は困惑していた。 薩摩に赤報隊処刑の理由を聞きたくとも、出頭すれば自分が捕縛される可能性もある、今薩摩にのこのこ行くのは危険だ、金輪は薩摩に裏切られたと思った。 「ごめんなさい!俺達……傍にいたのに何も出来なかった」 「いや……報告ご苦労だった、お前達だけでも無事で何よりだ」 大切な同志を失い、直ぐにでも仇を討ちに行きたい思いを抑えて金輪は耐えた。 それよりも…… 泥まみれになっている二人を見て、金輪は心を痛めた、二日間ろくに食事も取っていない二人の為に、金輪は握り飯と風呂を用意した。
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