慟哭

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金輪によって相楽総三ら幹部八人が処刑された事は、瞬く間に同志に伝えられた。 相楽の死に、皆は驚愕し動揺していた、民衆にとって相楽は英雄であり、偉大な指導者を失ったに等しい。 金輪は佐之介と克弘を連れて下諏訪に向かう、ただし赤報隊の残党狩りをしている諸藩に見つからないように、移動するのは夜だけに限られた。 「大丈夫か?辛いなら京に残っても良かったんだぞ?」 「ううん、行く……浅井さんもまだ下諏訪にいるはずだから」 「克弘……」 克弘は三田の薩摩藩邸にいた頃から世話になっていた、浅井才二(神田湊)を兄のように慕っていた。 たった一人の母を亡くした克弘にとって、浅井は唯一頼れる存在なのだ。 道中、心配する金輪に克弘は力強く頷いた、浅井と克弘が死を免れたのは、これで二度目だ。 一度目は江戸にいた頃、甲府に向けて挙兵した時、横山宿の壺伊勢で佐藤彦五郎率いる八王子千人同心に襲撃された時、浅井は頭を斬られる重症を負ったものの、何とか藩邸まで戻る事が出来た。 そして、今度も使番として幹部に名を連ねていたにも関わらず、斬首は逃れ、晒しの刑の後追放となった。 相楽総三と共に処刑されたのが、何故あの七人だったのか、金輪には検討もつかない。 いくら考えた所で、同志が還って来る事はない、竹貫や大木とは付き合いが長かっただけに、悔しさと悲しみは大きかった。
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