慟哭

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昼間は駕籠や馬を使い、夜は歩きで休む暇もなく下諏訪へ急いだ。 京都から出発してから三日後…… 漸くたどり着いた金輪は、月明かりに照らされた相楽達の首を見て、愕然とした。 「相楽さん……竹貫……大木……」 処刑から十日が過ぎた、それでも相楽達はまだここに晒されていた。 金輪は、この変わり果てた同志の姿を見て、新政府に強い憎しみを覚えた。 「相楽さん……悪い」 ザクッ…… 金輪は懐刀を取り出すと、相楽の髻を切った。 髻は血にまみれ、それが固まり、まるで棒のようになっていた。 切った髻を懐紙に包み、それを懐にしまう。 「本当は首を持って帰りたいけどな……」 人は首だけになっても、かなりの重さがある。 大人でも首を一人で持つのは用意ではない、誰にも見つからず形見を持って帰るには、これが精一杯だった。
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