慟哭

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『……何で俺なんだよ?』 今までに見たこともない大金を手にし、志渡は動揺していた。 『この数日、君の事を見ていたが、君は周りからの信頼も厚く、信用出来る人物だと思ったからだ』 志渡の行動を小島四郎(相楽総三)は良く見ていた、面倒見の良い兄貴肌で、信頼も厚く、皆から慕われている、そんな志渡なら、きっと仲間を連れてやって来てくれるだろうと…… 『お前……俺がこのまま、金持って逃げるとか考えなかったのかよ?』 『君はそんな事はしない……そうだろう?』 『……』 この脳内お花畑野郎の頭の中は常に満開らしい。 小島は自分が信じた者を疑うという考えに至らないようだ、きっと間者がいたとしても平気で受け入れてしまうのだろう。 (危なっかしくて、放っておけねえ……) 人の良さでは誰にも負けないであろう小島に、これでもかと言うくらいの信頼を受け、志渡はようやく覚悟を決めた。 『悪いが……これは他の奴に頼んでくれ』 『えっ……?』 志渡は小島が手渡した金子を突き返した。 『俺はお前に着いていく』 『志渡君……』 志渡は脱藩を決意した、小島と共に同じ道を歩む事を選んだのだ。
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