慟哭

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翌日 「来たぞ……克弘」 「浅井さん……」 「俺は奴等に見つかる訳にはいかないから、お前が行くんだぞ」 「うん!」 克弘は自分達ではなく、浅井才二(神田湊)と共に行きたいと昨日の夜打ち明けられた。 浪士隊の頃から、ずっと傍にいてくれたのは椿と浅井だった、浅井には火薬の扱いから鉄砲の撃ち方まで、一人前に扱えるようになるまで手取り足取り教えて貰った。 身寄りのない克弘にとって、浅井の存在は兄であり、家族であった。 これから、どこに追放されるかもわからない、もう故郷である甲府にも戻れない。 相楽を失ない絶望に満ちた浅井の事を克弘は放っては置けなかったのだ。 克弘は金輪と佐之介に別れを告げて、藩士に連れられた浅井の元に駆け寄った。 「才二兄ちゃん!俺を置いて行かないで!!」 「克弘……お前、どうしてここに……?」 樋橋に置いて来た筈の克弘が、突然目の前に現れ、浅井は困惑した。 「何だ?その者は?」 「これは……その、俺の弟です」 「弟?」 「俺が捕まったと聞いて心配になって既定しまったのでしょう」 子供だとはいえ、赤報隊関係者だと知れたら、どんな仕打ちを受けるかわからない。 藩士には自分の弟だと説明する以外、思い浮かばなかった。 「克弘……お前は、家に帰れ」 「嫌だ!一緒に行く!連れて行ってよ……」 どうしても、着いて行くと聞かない、困り果てた浅井に見かねた藩士は…… 「構わん、着いて来たいなら来ればいい」 「いいのですか?」 「武士の情けだ、兄弟が離ればなれになるのは辛かろう」 「ありがとうございます」 浅井達は既に刑は受けた、後はおとなしく後世を過ごすが良いと藩士は行った、浅井は頭を下げ、克弘と共に生きていく事を決めた。
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