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「誰が相楽さん達をやったんだ……」
「……岩倉、奴が殺ったんじゃないか?」
集まっている者の誰かが、この処刑を指示したのは岩倉具視ではないか?と言い出した。
西郷が相楽達、浪士を使って江戸で攪乱活動を行う計画を立てていた時、その謀議に岩倉は参加していたと言う。
綾小路や滋野井が京都を脱出した際、裏で糸を引いていたのも岩倉だ。
「東山道総督府も岩倉の関係の者だ……」
「直接、話しがしたい……それ如何によっては奴を斬る」
岩倉具視を暗殺しよう、最初にその案に賛同したのは金輪だった。
そして、落合、科野も岩倉暗殺計画を実行すべく準備を進めていた。
だが、その計画は直ぐに岩倉の耳に入ったのだ。
「報告、ご苦労だった……飯田君」
「どうなされますか?岩倉公」
飯田と呼ばれた者は、飯田武郷と言い、相楽と出会ったのは、相楽が赤城山の挙兵計画に頓挫した後の文久三年の暮れ、相楽が再び同志糾合の為に信州に訪れた。
その時に出会い、飯田は多くの同志達を江戸の薩摩藩邸に送り込んでいる。
飯田はその後、岩倉に仕えたのである。
そんな飯田から見たら複雑な心境である、かつては同志として、共に新しい時代を目指そうと約束した相楽が殺され、本当に岩倉が指示をしたのであれば、憎き仇である。
だが、岩倉を死なせる訳にはいかない、新しい時代に岩倉が必要である事を飯田はわかっていた。
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