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次は自分の番だというのに、小松は落ち着いていた、冷静に自分の死に向き合い覚悟を決めている。
「椿ちゃんに、私らの最期を見届けさせるのはほんに酷じゃのう……」
小松は後ろを振り向いた、その視線の先には、椿が大粒の涙を流しながら、愛しい人をしっかりと抱いている、巫女の衣装は血で真っ赤に染まっていた。
小松はもう一度相楽の方に向き直し……
「相楽さん、私は相楽さんと同じ道を歩めた事を誇りに思っちょる」
「小松君……」
「ちっとも後悔しちょらんき、気にせんでええ」
小松は土佐藩の福岡孝弟の同志であった、坂本龍馬とも交流深く、福岡や坂本を通じて西郷と繋がりを持った。
そんな時、小松は相楽と出逢い、相楽の志に感銘を受け、共に行動したいと願う。
だから、坂本が暗殺された事を相楽に報告しに行く役目を自ら志願したのだ。
小松は西郷の元には戻らずに相楽といる事を選んだ。
信頼出来る同志と生死を共に出来る、短い時だったが小松は満足だった。
自分が選んだ道だ、後悔などする筈がない。
自信に満ちた小松の顔を見て、相楽は少しだけ救われたような表情を浮かべた。
「ありがとう……小松君」
「んじゃあ、先に逝くき……後でまた会おう」
大木の死を目にしても、誰一人死ぬ事に対し臆病になっておらず、それどころか、その死に様は見事なものであった。
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