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小松の次は竹貫だった。
竹貫三郎、数えで二十四になった。
竹貫家は藩主である佐竹氏に仕える兵で、立派な武士の生まれである。
気の荒い、金輪や大木と違い、冷静沈着で賢く、その上長身で顔も良い、故に黙っていても女の方から寄ってくる、とても人気がある青年だった。
そのせいか、竹貫の名が呼ばれた時、女達の啜り泣く声があちらこちらから聞こえて来る。
「相楽さん……俺は貴方が秋田で語った夢を忘れません」
相楽は尊皇派ではなく佐幕派であった、相楽が好んで参拝していた赤坂の氷川神社の近くに勝海舟邸がある。
その影響なのだろう、相楽はかつて幕府を助け国を助ける、そう考えていた。
しかし、開国を迫る異国に弱腰の幕府に絶望し、尊皇攘夷へと突き進む。
実家である小島家から金を持ち出し、同志を糾合する為に旅に出る、相楽が二十三・四の時である。
その時立ち寄ったのが、渋江内膳の道場だった。
道場には、まだ十代だった竹貫や大木、金輪も出入りしていて、他にも多くの人間が江戸から来た相楽の話しに興味津々だった。
竹貫と金輪は相楽が秋田を出る時、一緒に脱藩した、それからの付き合いなのだ。
相楽にとっても大切な仲間だ……
死なせたくはなかった。
「すまない……竹貫君……」
すまない……相楽は何度も心の中で謝った、もしここで死ななかったら、将来立派な人物になっていたに違いない。
自分について来なければ……
こんな最期を迎える事はなかったのにと後悔した。
「相楽さん……お世話になりました」
竹貫は相楽に深く一礼した。
そして、物言わぬ屍となった。
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