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竹貫の次は渋谷総司。
渋谷は名を呼ばれても、その場から動く事が出来なかった。
「どうした?渋谷、今さら怖じ気付いたか?」
その場に立ったまま動かない渋谷を、西村が茶々を入れる。
「西村さん……そうじゃない……けど」
「わかってる、椿の事だろう?」
渋谷は椿の方を振り返り頷いた、もう三人が処刑された。
その惨さに民衆は目を反らしている者、手を合わせ念仏を唱えている者、泣きじゃくり母にしがみついている者。
「もう充分だ……」
「彼らが我々に何をしたと言うんだ……」
そんな声すら聞こえてくる。
それもそうだ、罪状は読む事もせず、ただ相楽達に見せただけ、もしその内容を民衆が知ったら、明らかに冤罪だと言う事がわかってしまう。
今さらこの処刑を取り消す訳にはいかない。
「ごめんね……椿君」
渋谷は相楽の手紙で呼び出され、下諏訪の脇本陣の辺りで捕縛された。
捕まった同志は片鬢片眉を剃落し追放となる事が決定している、渋谷もその中に入る筈だった。
晒し刑にあっても生きてさえいれば、後の世を椿と生きる道もあったかも知れない。
だけど、渋谷が選んだのは相楽達と共に死ぬ事だった。
「一緒に生きてあげられなくてごめん、先に逝く事を許してくれ……」
渋谷の声は椿には届かない、それでも伝えたかった。
渋谷は椿に向かい微笑んで、そして処刑場に向かった。
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