12人が本棚に入れています
本棚に追加
「さて……逝くか」
そう言って立ち上がったのは西村謹吾。
西村は竹貫と一歳違いの二十五歳。
浪士隊の時には出流山の挙兵に参加し敗戦の末、三田の薩摩藩邸に逃げ帰っている。
この時一緒いた同志は捕縛され処刑、自分だけおめおめと生き残り、生き恥を晒すより同志の後を追い腹を切る覚悟をしていた時、生きる意味を諭してくれたのが椿だった。
もう少しだけ……
相楽さんの為に生きて欲しい……
そんな事を言われたら生きるしかないじゃないか。
最期まで共に生きようと決めた約束を違える事は出来なかった。
だから、こうして共に果てる事を、これっぽっちも後悔などしていない。
ここにいる皆は同じ気持ちだ。
悪人だと謗りを受けようが、自分達がしてきた事は全て国を想うが故。
それを誇りにして逝こう。
「相楽さん……自分を責めるなよ、あんたがしてきた事は何一つ間違っちゃいない」
「西村君……」
「あんたといた数年間は、俺が生きた二十五年よりも尊い、俺はそれを誇りに思う、あんたには感謝しているよ」
「ありがとう……」
西村は相楽が、自分達の死で自分を責め、人を恨み、悪神に変わらぬよう願った。
相楽は西村の言葉にどれ程救われたかわからない。
最初のコメントを投稿しよう!