空を斬るときのキスは、草の味がするのだろう

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「獣人、魔法、モンスター、……私は、そういった歪みを生み出してしまった」 「じゃあ斬り捨てればいいでしょう。斬ってみて下さいよ」  「それが出来ていれば、私は」 「世界は、前触れなく唐突に変わる」  僕はリリーの手を握った。  雨に濡れて、とても冷たい。 「これ。貴方が教えてくれたことですよ」  空を眺めていたのに、視界はリリーの顔に遮られる。 「私を神と称える世界など、馬鹿らしくて仕方ないな」  僕の唇と、リリーの唇が触れ合う。  これも暗黒地帯にいた頃、本で読んだことがある。  キス、というやつだ。 「草の味がするな、ひつじ君」  体を起こす。あれだけ降っていたはずの雨は止んでいた。  僕は空を見上げて、それから隣にいるリリーの顔を見た。 「空を、斬ったよ」  無邪気に、子どもみたいに、リリーは笑った。  永遠だったものが終わる。それはとってもワクワクすることに違いない。  それは僕が一番よく知っている。  メェ、と羊の真似事をして、  僕はもう一度、リリーの唇にキスをした。
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