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「父さん、身体は本当に大丈夫?」
「心配するな。それよりお前が結界創造の術を習得しなければ、此処を守る術は潰え、曳いてはこの国に災いが起こる。しっかり頼むぞ」
「そのことだけど……。今更だけど、俺が此処を出る前に確認したい。卑弥呼様の墓―― あの大樹に囲まれた苔むした小さな丘にどんな意味があるのか教えて欲しい。 本当に命懸で守るようなものなのか?」
今までに何度もぶつけた質問だが、いつもはぐらかされてきた。今日も納得のいく答えは返って来ないのかもしれないが、父親とはもう2度と逢えない可能性がある。何かあった時のために悔いは残したくない。
無人はそんなふうに考えて身構えていたが、いつになく力の抜けた優しい口調で返事が返ってきた。
「実はな、父さんも知らないんだ」
「えっ」と言いかけて無人はかろうじて口をつぐんだ。
「父さんも若い頃は何度となくその疑問が頭の中に浮かんできたさ。だが、お前のお祖父さんが『ここが日本国の要だ。此処を護れ』とだけ言い残したんだ。信じるしかない。父さんに十分な実力が無い事を分かっていたから、あえて大事なことは伏せていたんだろう」
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