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彼なりのジョークだろうか、あるいは何かサプライズを企んでいるのか、私は部屋の中を見渡し、自分の誕生日や記念日の記憶を丁寧に整理し直した。しかしどれだけ記憶を辿っても、今日は平凡な11月8日に変わりなかった。
「つまり」と私はようやく声を発した。
「3時間後にはあなたはいなくなってもう会えないってこと?」
言葉にしてみると、理不尽な別れが迫っている可能性にひしひしと気付き始めた。
彼はしばしの沈黙の後、そういうわけでもない、と首をゆっくりと動かした。
「3日後にはまた僕、というよりも福井雅人がやって来るよ。姿形も声も福井雅人だ。これまでの僕が担当した4年間分の情報の引き継ぎも行なっているから、遜色はないよ。君はまた交際を何不自由なく続けられる」
私が息を止めたように静止していると、彼は続けた。
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