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「要するにね、僕たちは君たちが地球と呼ぶこの惑星とは異なる惑星から各々調査や研究のために派遣されているんだ。福井雅人というのは容れ物のようなもので、調査をしに来る際に使用する使い回しの存在に過ぎないんだよ。急に人が消えたり増えたりすると処理が面倒だからね。全体数は把握していないけれど僕たちのような調査員はそこかしこにいるよ。この惑星の住民の中にもそのことを知っている者も勿論いる。公にはされていないみたいだけどね。まあだから福井雅人として9番目に派遣された僕は調査が終了したからこれから帰還しないといけないけれど、すぐに10番目の調査員が同じ姿でやって来るから、心配はいらないよ」
かなり簡潔になされたであろう説明を噛み砕くこともできず、ぐわんぐわんと掻き回された脳内でただただ怒りが明確に身体を貫いていた。
「嫌じゃないの?」
「え?」
「私が他の人と付き合って、嫌じゃないの?」
愚かで幼稚な思考回路であることは重々承知しながらも、私の胸に残ったのはチョウサインやイレモノの話よりも、ただただ4年間交際を続けていたはずの彼氏らしからぬ発言についてだった。心配はいらないよとは何事か。
「少しも嫌じゃないの?私が他の人と付き合っても?」私は語気を強めてさらに問い詰めた。
雅人は見開いた目で私の顔を隅々まで眺めた後、「だから、他の人というわけではないよ、同じ人さ、つまりはね」
「でも、中身はあなたではないんでしょう?」
彼は唾を飲み込んだ後に、面白いねそんなことが気になるなんて、と笑った。
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