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「ねぇ、お願い。一度で良いからあの子に直接会いたいの」
「それはできないんです」
「でも」
さらに言い募る彼女の側に歩み寄り、そっと、だがしっかりと彼女の腕に手を添えた。
「帰りますよ」
少し強い口調で促し、マンションとは逆の方向の公園の出口に向かう。そこで同僚が車で待っている。
可哀想だが彼女はもっとセキュリティの厳しい病棟へ移されるだろう。いわゆる隔離だ。
だが仕方ない。そうしなければ、どんどん拡大していってしまうのだから。
それでも全てを防ぎきれるわけではない。
彼女を促し待機していた車に乗ろうとした時だった。
「お母さん!」
男の声で呼び止められた。
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